FXをしたり仮想通貨のトレードをする上で、最も重要な理論と言えば、ダウ理論ではないでしょうか。チャートを形成する以上、ダウ理論は避けては通れない理論ですし、チャートを見る上で、常にダウ理論について考え続けなければならないと思います。
今回は、FXの基本とも言えるダウ理論について、解説します。
FXにおけるダウ理論とは
ダウ理論(Dow Theory)とは、チャールズ・ヘンリー・ダウ(Charles Henry Dow/1851年~1902年)というアメリカの証券アナリストが提唱した理論。チャールズ・ヘンリー・ダウは、ダウ・ジョーンズという会社を設立し、「ウォール・ストリート・ジャーナル」を創刊したり、現在でも広く認知されている「ダウ平均株価」を開発しました。
ダウ理論は、6つの法則から構築されている理論で、全てのテクニカル分析の礎と言っても良いほど、基本中の基本の理論になります。本来は株価に対する理論ですが、FXや仮想通貨のようにチャートを形成するものであれば、理論は崩れないと考えられます。
【ダウ理論第1法則】市場は全ての事象を織り込む
(画像1)ダウ理論第1法則-市場は全ての情報を織り込む-
ダウ理論の1つ目の法則は、「市場価格には、良い情報も悪い情報も織り込まれている」という法則。
例えば、アメリカの利上げはUSD(米ドル)の価値を上げること、つまりUSD/JPY(ドル円)の為替チャートであれば買いになるのですが、利上げ発表後であれば、チャートにその情報が織り込まれているという事を意味します。また、日銀総裁が、日本にとってネガティブな発言をした後であれば、JPY(日本円)の価値を下げる事をチャートは織り込んだと考えるのです。
このダウ理論の1つ目の法則は、まさにその通りで、上昇トレンド継続中に為替に影響が出るニュースが出てきても、それは単なる押し目買いになるか更なる上昇を招くという程度。結果として、上昇トレンドという大勢に影響はないという経験しかありません。
要するに、市場、即ちチャートでは、各情報は既に反映されているため、チャートのみを分析すれば、現在のトレンドを把握でき、更には将来のチャート予想を立てる事ができると言えるのです。
ファンダメンタルズを重視する人もいますが、個人的には、ファンダメンタルズでは将来の価格の予想はできないため、”ほぼ”考慮せずに、チャートのテクニカル分析が最重要であると思います。
【ダウ理論第2法則】チャートのトレンドには3種類のトレンドがある
(画像2)ダウ理論第2法則-3種類のトレンドがある-
ダウ理論の2つ目の法則は、「長期トレンド、中期トレンド、短期トレンドの3種類のトレンドがある」という法則。
長期トレンド(主要トレンド) | 1年から数年のトレンド |
中期トレンド(二次トレンド) | 3週間から3ケ月のトレンド |
短期トレンド(小トレンド) | 3週間未満のトレンド |
チャートというのは不思議なもので、どれだけ買いが優勢な相場であっても、永遠に上がり続けるわけではなく、上がり続けると、その後に下げて調整するという特性があります。
長期トレンドの調整波が中期トレンドになることも多く(同じ波動の向きの場合もある)、その調整波はフィボナッチリトレースメント(38.2%戻し、50%戻し、61.8%戻し)に準ずる事が多い傾向にあります。
ちなみに、これは持論ですが、4時間足を見てテクニカル分析をすると、今後3週間程度の予測を立てることができるので、短期トレンドを予想することが可能です。また、日足を見てテクニカル分析をすると、今後3ケ月程度の予測を立てることができるので、中期トレンドを予想することが可能です。対局を見るのであれば、週足や月足を見ると良いと思います。
尚、このダウ理論第2法則は、実際のトレードではあまり気にしなくて良い内容なので、知識として覚えておく程度で良いでしょう。
【ダウ理論第3法則】主要トレンドには3つの局面が存在する
一見すると上がり続けているトレンドでも、その中には押し目と呼ばれる反発地点がいくつか存在します。主要トレンドをその押し目で区切ると、「先行期・追随期・利食い期」の3つの局面に分けることができるのです。
- 【先行期】一部の投資家が、底値だと判断し、底値買いをしてくる時期。この時の市場価格は、価格がやや下落傾向にあるか、揉み合っている状況か、緩やかに価格が上昇している時期です。
- 【追随期】テクニカル分析で誰もが分かる明確な反転サインが出たり、ファンダメンタルズ的に良い材料が出た後、多くの投資家が買いポジションを持って参加してくる時期。価格は上昇します。
- 【利食い時期】価格の上昇幅が減り、先行期などから参加している大口トレーダーなどが利益確定をする時期。ただ、初心者の投資家は、この時期から買いで参加することも多いです。
チャートとは、市場に参加している人達の心理の表れだと考えます。このダウ理論第3法則は、実際のトレードにはあまり役立たないので、頭の片隅に入れておく程度で良いと思います。
【ダウ理論第4法則】トレンドは相互に確認されなければならない
ダウ理論の4つ目の法則は、FXには少し当てはめにくい法則。
ダウ理論が発表された当時、工業製品の生産が盛んになると、輸送手段である鉄道整備がよく行われたため、工業と鉄道は相互に影響し合っていました。そのため、ダウ工業株平均指数とダウ鉄道株平均指数(現在のダウ輸送株20種指数)が作られ、これら2つが同じトレンドでなければ、明らかなトレンドとは言えないという法則が作られたのです。
従って、このダウ理論の4つ目の法則は、FXにおいては、覚えておく必要はありません。
ただし、アメリカの長期利回りが上がればドル円も上がったり、ユーロドルが上がっている時はドル円が下がりやすかったり、ゴールドが買われている時はドル円が下がったりしやすい相関関係が起きやすいという特徴もあります。
これは、ダウ理論第4法則に通じるものがあるため、全く関係ないかと言えば、そうではないのです。
また、仮想通貨については、BTC(ビットコイン)のトレンドに他の通貨も追随することが多いという傾向があるため、ダウ理論第4法則は当てはまると考えられます。
【ダウ理論第5法則】トレンドは出来高によって確認できる
ダウ理論の5つ目の法則は、「上昇トレンドの場合は、価格が上がる時に出来高が増え、価格が下がる時に出来高が減る。下降トレンドの場合は、価格が下がる時に出来高が増え、価格が上がる時に出来高が減る。」という法則。
これは、トレンドに沿った方向性、即ち順張りでトレードする投資家が多いために起こる現象。
確かに、株の取引のように、出来高が明確に分かるのであれば、出来高を見てトレードをする事は理にかなっています。
しかし、FXの場合、MT4(Meta Trader4)などで出来高は表示できるのですが、この出来高というのは取引しているFX会社における出来高であって、世界中の出来高とは異なります。
一定規模以上のFX会社の口座を使っていれば、統計的にその出来高の信頼度は高いと言えるとは思いますが、時間帯によっては信頼度が下がる可能性は十分あります。日本のFX会社の口座を使っている人は、ほとんど日本人であって、生活リズムがあるため、時間帯によってはトレード量が極端に減ると考えられるからです。
つまり、FXにおける出来高というのは、厳密に言えば正しいと言えないので、あくまで参考程度にした方が良いと思います。
仮想通貨の出来高に関しては、厳密にはある程度追う手段があります。しかし、普段見るチャートに表示される出来高は、取引をしている取引所の出来高が表示されているため、参考程度にした方が良いと思います。
【ダウ理論第6法則】トレンドは明確な転換シグナルが発生するまでは継続する
(画像3)トレンドが継続する条件
ダウ理論6つ目の法則は、非常に重要な法則です。それは、「明確な転換シグナルが出るまで、トレンドは継続する」という法則。
まず、トレンドには、上昇トレンドと下降トレンドの2種類があります。高値が切り上がり、安値(押し安値)も切り上がっている状態を上昇トレンドと呼び、逆に、高値(戻り高値)が切り下がり、安値も切り下がっている状況を下降トレンドと言います。
上の画像(画像3)で言えば、A1→A2にかけて安値は切り上がっており、B1→B2→B3にかけて高値が切り上がっているため、これは上昇トレンド。また、C1→C2にかけて高値が切り下がり、D1→D2→D3にかけて安値が切り下がっているため、これは下降トレンドを示します。
一般的にチャートと言えば、上の画像(画像1や画像2)のようなローソク足で表現しますが、画像3は、そのローソク足をジグザクした線で簡略化して表現したものになります。頻繁に登場する表現法なので、覚えておきましょう。
転換シグナルがあるまでトレンドは継続する
(画像4)転換シグナルがあるまでトレンドは継続する
ここで重要なことは、上昇トレンドの最中に、「高値が切り下がる」もしくは「押し安値が切り下がる」のどちらかが発生した場合の対処。上の画像(画像4)で言えば、5A部分や5B部分で発生しています。
下降トレンドの最中に、「戻り高値が切り上がる」もしくは「安値が切り上がる」のどちらかが発生した場合も同様ですが、この場合、ダウ理論においては、トレンドは継続であると考えるのです。
では、トレンドが転換する明確な転換シグナルとは、何なのでしょうか。次をご覧ください。
明確な転換シグナル
(画像5)ダウ理論第6法則における明確な転換シグナル
明確な転換シグナル、つまり、上昇トレンドが下降トレンドに変わる瞬間をどのように判断すれば良いかというと、それは高値が切り下がり、安値の切り下がりが確定した瞬間で判断します。
上の画像(画像5)を見てください。
チャートは、A→B→C→D→E→F→Gの軌跡を描いています。見事に、高値も安値(押し安値)も切り上げているため、上昇トレンドだという事が分かります。
しかし、G-Hの波動を見ると、HはFと同じレートで、安値は切り上がらなくなりました。更に、H-Iの波動を見ると、高値も切り上がらなくなりました。
ただ、この時点では切り上がらなくなっただけで、高値と安値の切り下がりが発生していないので、まだ上昇トレンドは継続です。
しかし、Hが起点となり、H-Iの波動が直近の高値のGを抜きに行きましたが、失敗しました。
この時、G→Iに高値は切り下がっています。
ここで、直近の押し安値であるFのレート(画像5の星マーク部分)を下回ると、これは高値が切り下がり、安値が切り下がることになり、上昇トレンドから下降トレンドに転換したと言えるようになるのです。
では、何故、安値であるHではなく、押し安値のFを下回るかを基準にするかというと、理由は2つあります。
1つ目の理由は、人によって、チャートのジグザクした線の引き方が違うため。線を引いてみれば分かりますが、紛らわしい時があるからです。そして、もう1つの理由は、直近の高値Eを抜きに行ったF-Gの波動の起点Fには、強い買い勢力がいるためです。FもしくはF-G間でロングのポジションを持った人は、Fを割り込んだあたりから、損切りをする傾向がある(ロングでポジションを持った場合、損切りはショートになる)ため、このFのレートが重要なのです。
ダウ理論は、FXのトレンド判断に使う
ダウ理論を用いてFXのチャートを見ると、現在、上昇トレンドの中にいるか、下降トレンドの中にいるかが容易に分かります。
上昇か下降しかないため、至極単純なのですが、いざ本番トレードをしようとすると、困る場面がよく出てくるものです。
困る理由は、全ての時間足において、トレンドの方向が一致していないため。例えば、15分足や30分足では下降トレンド、1時間足や4時間足では上昇トレンド、日足や週足や月足では下降トレンドという事は多々あります。
こんな時に、ダウ理論の使い方を間違えると、痛い目に合います。
基本的に、トレンドを見る場合は、大きい時間足から見てトレンドの判断をするのが無難。月足や週足を見て、長期のトレンドの方向を把握。日足を見て、中期のトレンドの方向を把握。4時間足を見て、短期のトレンドの方向を把握するのです。
そして、そのトレンドの方向に合わせて順張り(トレンドと同じ方向のポジションを持つ)をするのが一般的です。
この時、自身のトレード手法によって、重きを置く時間軸が変わります。
レバレッジを下げて、数ケ月以上の長期で投資するつもりであれば、月足や週足を見てエントリーするべき。
数日から半月程度の期間ポジションを持つスイングトレードをしたいのであれば、4時間足あるいは日足に重きを置くべきです。
数時間しかポジションを持たないデイトレードであれば、1時間足や30分足を重視すべきですし、数分程度しかポジションを持たないスキャルピングをするのであれば、トレンドを見るというよりは、プライスアクションを見た方が効率的です。
どちらにせよ、どんなトレードであっても、トレンドの方向の見極めは最重要ですし、短期の時間足だけを見るのではなく、長期の時間足から順番に見て行き、トレンドを把握する必要があります。これが、基本中の基本なのです。
ダウ理論に関する動画
youtubeチャンネル でもダウ理論に関する動画を公開もしています。
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